
犬猫の腎不全
犬猫の腎不全の要点
発生平均年齢 | 犬で7歳、猫で9歳(猫では10歳で20~40%が罹患) |
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特徴 | ・多飲多尿(お水をたくさん飲むようになり、おしっこが多くなる、またはおしっこの色が薄くなる。) ・体重減少 ・口の臭いが臭くなる スコティッシュやアメショーでは尿管結石が非常に多いです。 |
発見 | 多飲多尿や口臭が気になったら血液検査 |
リスク | 猫では10歳で20%(40%とする論文もある)が罹患するとされていて、腫瘍に次いで猫の死因の2番目と非常に多い病気です。 |
特徴

犬、猫ともに多飲多尿が飼い主さんが気付きやすい症状です。
最近、水をよく飲むようになったなぁ~、やたらおしっこの量が多いなぁ~、おしっこの色が薄くなったな、などの症状が見られたら、なるべく早めに受診しましょう。
また雄猫では尿石症が原因で急性の腎不全に陥ることがしばしばあります。単独飼育の場合はトイレの濡れ具合で気付きますが、多頭飼育の場合は発見が遅れる事が多く、致死的になることも珍しくありません。『トイレに入っている時間がながい』、『今までちゃんとトイレで排尿してたのに最近そそうをするようになった』、『便秘かな?』そうなったら早急に病院に行きましょう。おしっこは2~3日出ないと死に至ります。けっして様子を見てしまって手遅れにならないように注意してください。
どんな治療をするの?

腎不全はIRIS(国際獣医腎臓研究グループ)によりステージが分けられています。
各ステージにおいて少し治療が異なりますが、概ね投薬と点滴、食事制限が必要となります。
各ステージにおける治療を見てみましょう。
各ステージにおける症状と治療
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◆ ステージ1 ◆
腎臓の予備能が低下しているが臨床症状は認められない。 つまり、ごく軽度の多飲多尿や体重減少がみられることがありますが基本的にまだ無症状です。しかし、腎臓はその全体の機能を100とすると25%が機能していれば生命に関わることはありませんので症状を見つけることが難しい時期です。 このステージでは投薬または食事療法を行います。
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◆ ステージ2 ◆
代償期。つまり残っている正常な腎臓の部分(ネフロン)がなんとか頑張ってダメになってしまった腎臓の部分の働きを補っている状態です。ここでもステージ1と同様に投薬または食事療法が中心となります。状態に応じて皮下点滴が必要となります。腎不全では必ず脱水をともない、脱水することにより腎臓への血液灌流量が減少することによって高窒素血症を引き起こします。この状態が続くと腎臓がよりダメージを受け腎不全の進行を早めてしまいます。
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◆ ステージ3 ◆
代償不全期です。腎臓の組織は75%以上障害されていて多飲多尿、体重減少に加え貧血も認められるようになります。投薬、食事療法、皮下点滴が必須となります。
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◆ ステージ4 ◆
末期。生命の維持が困難な状態です。人では人工透析が必須となる状態で、人工透析を行うことにより長期生存が可能です。しかしワンちゃん、ネコちゃんでは血管が細い、時間が非常にかかる、コストが高いなどの理由から、現状、人工透析は一般的に受けられる治療ではありません。

以上のような病態、治療法を考えてもどんな病気でもそうですが、特に腎不全は早期に診断、治療をすることにより長期の良好な生活を期待することができます。『水をたくさん飲むようになった』、『おしっこの量が増えた』、『おしっこの色が薄くなった』というような症状がみられたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。